戸田の昔話 第九話
十日夜の話
「とうかんや とうかんや イネコノぼたもち 生でもいいから練れたら持ってこい!」(下戸田川岸)
「とうかんや とうかんや イネコノぼたもち 生でもいいから持ってこい!」(下戸田喜沢)
「とうかんや とうかんや イネコロぼたもち 生でもいいから釜ごと持ってこい!」(惣右衛門)そのあと、パーンパーンと音をひびかせます。これは毎年十一月(旧十月)十日の夜を「十日夜」といいまして、戸田の各地区では昔から、こども達の楽しみな年中行事でありました。
その時にワラ鉄砲で地面をたたいて大声をだし、村中をまわる唄がとうかんやの唄なのです。戸田ではイネコ(稲子)ともいわれ、地方によってはイノコ(亥の子)ともいわれています。秋のとり入れもおわりまして十日の夜に子どもたちは、ワラ束を庭に持ちより、おじいさんから、教えてもらってワラ鉄砲を作ります。かたくまるめて、いい音がでるようにワラの中に里芋の茎をいれたり、それぞれが工夫します。できあがりますとおおぜいで地面をおもいきりたたきます。
これは大切な豊作物を食べ荒らすネズミやモグラなどを追い払うためだとか、この時期の大根は上の方が地面から少し、とび出しているので、地面をたたくとさらにとびだして抜きやすくなるからだともいわれ、子どもたちはモグラの出そうなところや畑の近くへ行ってパンパン、ポンポンと打ち鳴らします。
それに子どもたちのもう一つのたのしみはぼたもちが食べられることです。おばあさんやおかあさんが、心をこめてつくってくれましたぼたもちは、神仏に供えて(これは稲子さまに供えるともいわれています)からいただきます。そのために、「とうかんや とうかんや イネコのぼたもち 生でもいいから持ってこい!」と、子どもたちはおおはりきりで家々を回って歩くのです。