戸田の昔話 第八話
戸田の狐の話
絵本「戸田の伝説」の「狐の嫁入り」のお話はおもしろかったですね。あれは、稲荷木耕地のお話でしたが、これから聞いていただくのは、下戸田あたりのもので、いくつかお話いたしましょう。
むかし、川岸に住むおばあさんが、夜遅くなって道をいそいでいますと、前を小僧っ子がチョコチョコ歩いておりました。「これ!これ!こんなに遅くどこへ行くの!」と聞きましたところ「わたしですか」といって、ふりむいた顔がなんと、おどろいたことに口が耳までさけた狐の顔だったのです。それから、おばあさんは子どもたちにけっして夜遊びをしちゃだめよと、いうようになったのだそうです。
また、ある春のあたたかい日のこと、川岸に住むおじいさんが魚や貝をいっぱいビクにいれての帰りみち、とつぜん大水がでて腰までつかってしまい歩きながら「おお深い、おお深い」といっておりましたところ、土手の方で皆が笑っているのです。
「なにがおかしい!」とおこったところ、「おじいさん、菜の花畑に入って同じところをグルグル歩きまわって、何してるんだね」といわれ、ハッと我にかえり足もとを見ますと水など一滴もなく菜の花畑のまん中で立っておりました。ビクには魚も貝もすっかりなくなっておりました。
むかしの人は、生ぐさいものを持ち歩くと狐に化かされるといいました。ただ、狐にも弱点があってマッチのイオウのにおいがきらいとか、たばこの煙に弱いといわれています。