戸田の昔話 第七話
梅の木稲荷のお話
下笹目の川っぷちに梅の木稲荷さまがあります。稲荷さまのまわりに、いっぱいの梅の木がうわっていたことから、梅の木稲荷と呼ばれるるようになったそうです。今は大きな鳥居とキツネ二体と石灯ろう二基、それに庚申さまが民家の庭に寄りそうようにたっています。
この梅の木稲荷さまは大正の昔、大変なにぎわいをみせたそうです。お話によりますと、ある日、五郎右衛門という人の庭に、とつぜんミカンや菓子が降って来たり、お供物がいつのまにかなくなったり、ということがしばしば、おこりました。家の人は「だれかのいたずらだんべえ」ぐらいにしか、おもっていませんでした。ところがだんだんひどくなり、天井うらから人の話す声や音楽までが聞こえてくるようになりました。これは狐のしわざだんべえ」ということになり、当時の新聞の記事にまでなりました。不思議なこともあるもんだと近郷近在から噂を聞いて、毎日、おおぜいの人がお参りに来るようになりました。
それがいつか、「五郎右衛門さんの稲荷さまは霊験あらたかで、拝んだら御利益があった。」という評判がたち、商売繁盛の「梅の木稲荷さま」とか「笹目のお稲荷さま」といわれ、関東だけはでなく、遠く、東北や北海道までから信者がつめかけたといいます。
蕨駅からテト馬車が往復したり、参拝人のための料理屋、みやげもの屋、だんご屋などがたち並び、名物の稲荷せんべいまで出ました。
境内には井戸もあって、その水を目につけると目がよくなるともいわれておりました。
youtube動画