戸田の昔話 第四話
日蓮上人と石芋
戸田と日蓮上人さまは、妙顕寺の子安まんだらの話でもわかりますように、深いつながりがあります。
日蓮上人さまにまつわるお話で、こんなはなしもあります。
昔、日蓮上人さまが、佐渡へ向う途中のことです。戸田のあたりにさしかかったとき、芋をたくさん作っている農家の前を通りかかりました。
ちょうどお昼どきで、芋をふかしているにおいがしました。上人さまは「どうか一つ芋をください」とたのみました。すると家の人はいやな顔をして、いじわるそうに「おらん家のはみんな石芋だから食えねえよ」といいました。
上人さまがすごすごと立ち去るのをみて、「へん、あんなどこのだれだかわからねえ者に、こんなうまい芋をやるもんか」と、ふかしたての芋を口の中に入れてビックリしました。
ガチガチッといいます。なんと、ほんとうに石の芋になっているではありませんか、急いで畑の芋を掘ってみますと、ぜんぶ石芋ではありませんか、それからは、畑でつくる芋はすべて石芋しかできませんでした。
また、日蓮上人さまのお話は、浦和市の調神社にもありまして、乗っていた馬をケヤキの木につないで休まれた「駒つなぎのケヤキ」と呼ばれる大ケヤキもあります。
日蓮上人さまは、日蓮宗の開祖で安房の国(今の千葉県)に生まれました。
鎌倉で、時の幕府に安国論を説きますが、逆にとらえられ、佐渡へ流罪となります。竜ノ口で首を切られようとしましたが天変地異がおこり、まぬがれたことは有名です。