戸田の昔話 第一話
おんめさんとムジナ
むかし、川岸の方に、おんめさんという、おばあさんが一人で住んでいました。おばあさんは大そう働きもので、夜はおそくまで縫いものをしていました。
ある冬の夜のことです。おそくまで縫いものをしておりますと、「トントン、トントン、」とだれかが戸をたたき、小さな声で「おんめさん、おんめさん」と呼びました。「はい!はい!」といって、おばあさんが戸を開けますと、外は冷たい風が吹いているだけでだれもいません。
「はて、おかしい、風のいたずらかな?」と縫いものを続けておりますと、またまた「トントン、トントン、おんめさん、おんめさん」と呼ぶ声がします、おばあさんは、いそいで立ち上がり、サッーと戸を開けますと、やっぱり外にはだれもいません。
三度目にトントンたたかれた時は、さすがのおばあさんも、こんどは、そーっと格子戸の窓から外をのぞいてみました。するとどうでしょう、ムジナが、器用に逆立ちをして、太いまるいシッポで、戸をトントンとたたいているではありませんか。
おばあさんは、ホウキをもって飛びだし「この性わるムジナめ、正体見たぞ!」と大きな声で叫びました。
これには、ムジナもびっくり仰天、ころがるように逃げ去りました。それからは、もう、ムジナは二度とおんめばあさんをからかわなくなったということです。
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