めるまが99(2019年9月10日配信)
今月の目次
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
縮小均衡を進めるための人材確保
前回までは、自治体運営の縮小均衡を目指すために、行政施策や住民との関係等の観点から考察してきました。今回は自治体の「人材」に焦点を当てます。組織は「人」で成立しています。政策を創出するのは「人」です。政策を運用するのも「人」です。すべては「人」により成立していると言っても過言ではありません。優秀な人を採用しなくてはいけません。
ところが、従来の採用方法では、自治体は優秀な人材を採用できないかもしれません。既に報道されていますが、新卒学生の採用について、民間企業は通年採用を拡大していく方針です。優秀な人材は、早い段階で民間企業に採られてしまう可能性があります。自治体も優秀な人材を採用するために、何かしらの手だてをとらなくてはいけない時期にきています。
年1回の採用試験ではなく、年数回実施してもよいかもしれません(最近は2回実施する自治体が増えてきました)。また、場合により、優秀な人材で、能力が証明できるのならば「選考」で採用してもいいと考えています(地方公務員法第17条の2)。選考は、競争試験以外の能力の実証に基づく試験になります。既に専門職においては、選考での採用も見られます。
自治体の採用試験は、原則は「競争試験」を行うこととされています。しかし、特例の場合として「選考」も可能です。記述しましたが、専門職だけではなく、一般職にも「選考」を拡大してもよいのではないでしょうか。そうすることにより、優秀な人材を早い段階で確保することが可能となります。この選考による採用は、筆者自身、もう少し考察してみます。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
時事通信社発行「地方行政」に公民連携事例が掲載されました!
時事通信社発行の情報誌「地方行政」では、2019年5月から木曜連載「公民連携の可能性」がスタートし、縮小時代に活路を見出す公民連携の手段や目的、具体的な取組などについて掲載されています。この中で、具体的な取組の第一弾として、政策研究所で昨年度実施した公民連携に関する事例が掲載されましたので紹介します。
近年、自治体政策で「公民連携」がキーワードの一つに挙げられています。このような中、政策研究所では、民間委託や公共資産活用などによる連携ではなく、職員の政策形成能力や住民のシビックプライド向上を目指し、大学や外部研究機関、民間企業などと協力し、市と連携先の双方にとって価値ある未来に向けて取り組んでいます。
そこで、「地方行政」では(1)大学における寄附講座、(2)民間企業との共同研究、(3)外部研究機関と実施した実証実験の3点と中心に紹介しています。今回、記事をホームページで掲載する許可をいただきましたので、めるまがでも紹介させていただきます。
(「地方行政」記事掲載ページ)
http://www.city.toda.saitama.jp/soshiki/111/hisyo-tihougyousei.html
なお、今回の記事に関しては、政策研究所・教育委員会・牧瀬稔氏(政策形成アドバイザー)の共著「共感される政策をデザインする-公民連携による戸田市の政策づくりと教育改革-」にて調査研究の詳細を掲載しています。こちらも、政策づくりに関心のある自治体職員や議員、地域政策関係者にとってオススメの一冊となっています。ぜひ興味のある方はご一読いただけると幸いです。
(図書紹介ページ)
http://www.city.toda.saitama.jp/soshiki/111/hisyo-new-book.html
(主任研究員 長谷川 昌之)
(3)戸田のここに注目!
全国から注目される戸田市の教育改革
戸田市の教育に関する取組は県内外からも注目され、教育委員会や学校に毎年50以上の団体が視察に訪れています。今回は、全国最先端の教育改革として5つのポイントを紹介します。
産官学民と連携した最先端の学びの導入
今後、世界的に技術革新が進み、多くの仕事がAI(人工知能)に代替されると言われています。そこで、AIを使いこなす力やAIに代替できない力を伸ばすため、企業や研究所などと連携した最先端の学びを導入しています。
戸田型PBL(プロジェクト型学習)の推進
PBL(Project-Based Learning)は、子どもたちが、各教科で学んだ知識や技能を使って、身近に存在する現実の課題を解決していく授業です。PBLの授業では、全ての教科で学んだことを総動員して、実際の問題解決に当たります。
EdTech(Education×Technology)の推進
タブレットパソコンを小学校に2,000台、中学校に1,000台導入し、調べ学習やプログラミング学習などで日常的に活用しています。ほかにも、外国に住む子どもと交流するなど、さまざまな技術や機会を活用した学びを推進しています。
多様なニーズへの対応
多様なニーズに応えることを目指し、民間企業と連携して子育て学習会を行うなど、複数の共同研究を行っています。また、フリースクールを運営する企業と連携して、不登校児童生徒のための教育支援センター「すてっぷ」を運営し、子どもに寄り添った支援を行っています。
EBPM(Evidence-Based Policy Making)の推進
学力向上や学習環境を改善するため、優れた教育政策や教育の実践を科学的根拠に基づき検証しています。6月にデータの分析や蓄積、情報発信のための組織として「戸田市教育政策シンクタンク」を設置しました。
(政策秘書室 千葉 尚樹)
(4)戸田ゼミの取り組み
2008年から本格的な人口減少時代に突入し、現代は自治体間競争の時代と称されています。この自治体間競争時代を戸田市が勝ち抜くため、職員一人一人の政策形成能力の確立と一層の向上を目的に、庁内自主勉強会「戸田ゼミ」を開始しています。
戸田ゼミは、これまで全体で95回開催し、今年度末に100回まで到達する予定となっています。過去の内容を振り返りますと、開始当初は、「指定図書の共通講読と意見交換」を主に実施し、文献や資料を的確に要約する能力を高め、指定時間内に自分の意見を他者に分かりやすく説明する能力の向上を意識して取り組んできました。
その後、「参加者同士での調査研究」を多く実施し、チームに分かれて調査研究に取り組んできました。ここでは、調査結果を職員提案などで発表まで行うことで、企画力やプレゼンテーション能力の向上を進めてきたところです。
このような流れを経て、現在では「有識者・学識者による講義と意見交換」を多く実施し、異なる経験や専門的な知識を持った方から直接学ぶ機会をつくっています。この結果、広い視野を持って業務に取り組んでいくことや、柔軟な物の考え方などにつなげているところです。
戸田ゼミでは、その時々に応じて内容を検討し、参加者の意見を取り入れながら、学びたいテーマを設定してきました。しかし、現在の内容としては、インプット重視になっているのではないかと課題に感じています。今後は、戸田ゼミでの学びをどのように活かしていくか、アウトプットを意識しつつ、効果的に学び合える場づくりを考えていきたいと思っています。
(主任研究員 長谷川 昌之)