めるまが98(2019年8月9日配信)
今月の目次
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
シビックプライドと関係人口
自治体運営の縮小均衡を達成していくためには、そこで生活する住民が鍵となってきます。住民の活躍により、地域は変わります。住民一人ひとりが自治体運営に積極的に関わってくれれば、彩りあざやかに地域が実現できるかもしれません。この観点から、いま注目を集めている概念が「シビックプライド」と「関係人口」です。今回は、これらを取り上げます。
それぞれの概念を確認します。シビックプライドは「都市に対する市民の誇り」と定義されます。そして「自分自身が関わって地域を良くしていこうとする、当事者意識に基づく自負心」という意味があります。一方で、関係人口とは「移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々」を指しています。
シビックプライドは、「個人」が抱く心の持ちようです。そして関係人口は、実際の「現象」(活動や行動)になります。すなわち次元が異なります。シビックプライドを持つ個人が、関係人口となり行動していく可能性があると言えそうです。人がある地域に対して誇りや自負心を持てば、その地域に関わりよりよくしていこうと行動する気運が高まるでしょう。
シビックプライドと関係人口を結びつけ、深化(進化)させていくことは、住民自治に結び付くはずです。住民自治とは「地方自治が行われる際に、その地方で生活する住民の意思と責任に基づいて、住民参加を基調として処理される形式」です。住民自治の必要性が言われてきました。住民自治のある自治体が縮小時代にも、より輝いていけると考えます。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
人を呼び込み定着させるシティプロモーション
政策研究所では、2008年の設置当初からシティプロモーションの調査・研究を実施し、2011年6月からシティプロモーションの戦略を策定、推進しています。
戸田市のシティプロモーションの特徴としては、調査に基づく目標設定とターゲティングがあります。まず、目標としては、観光地や産物が少ない戸田市には、居住地型のシティプロモーションが最適と考え、「住みよさ」をブランドの対象として定住人口の獲得を目指すこととしました。
次に、ターゲットについては、転出入の調査結果から、転出入の多い近隣2区3市在住の20・30代としました。また、定住を進めるためには、インナープロモーション(市内への働きかけ)も重要と考え、市民も当然にターゲットとしています。こうして定めたターゲットに直接働きかける取り組みとして実施したインターネット広告は、ホームページアクセス数を約17倍に増加させるなど、大きな効果がありました。
また、ターゲットである市民に対する取組としては、市制施行50周年記念イベント「とだ50祭」やボートコースを活用したイベント「くらふとカーニバル」があります。どちらのイベントも市民と職員の協働で作り上げたことで、参加された多くの市民に戸田市への愛着を育むことができたと考えます。
今年度は、更なる認知度(都市イメージ)向上と市民の誇り、愛着心の向上を図るため、「とだPR大使」の創設と広報紙のリニューアルに取り組んでいます。今後は、市全体の情報発信力を高め、戸田市のイメージアップを図り、市民が「住み続けたい」から「自慢したい、オススメしたい」と思える戸田市を目指していければと考えています。
(主任研究員 江口 護)
(3)戸田のここに注目!
待機児童緊急対策の取組報告 アクションプランの成果
戸田市は、2016年に待機児童数が106人と県内ワースト1となりました。そこで、同年10月に保育受入枠を1,200人分拡大する「待機児童緊急対策アクションプラン」を策定。これに基づき、既設保育園での受入拡大や認可保育園12園、小規模保育事業所1園の新設により3年間で受入枠を1,071人分拡大し、待機児童数は2019年には4人となりました。今後は、就学前児童数や申込率の推移をみながら受入枠を確保していきます。
実施した取組内容
「保育所の整備」
・市有地を活用した保育園の公募
・保育用地に対する固定資産税などの減免
・保育園の整備や運営に対する市独自の補助金を新設
・幼稚園の預かり保育への市独自補助金を新設
「保育士の確保・定着化・質の向上」
・就職支援給付金、賞与への上乗せ助成金の新設
・宿舎(保育士の社宅)借り上げ支援の新設
・インターネット広告などを活用したPR
・産学官協働による「とだの保育創造プロジェクト会議」発足
(政策秘書室 重松 会里子)
(4)戸田ゼミの取り組み
第3回(7月26日)の報告
第3回では、株式会社ぐるなび様より「食と地域発展」と題して講演をしていただきました。
「食」に関しては、こだわりの強い人もいれば、あまり強くない人もいると思います。私自身、それほど食に対するこだわりが強い方ではありません。しかし、日々の暮らしの中で食事は不可欠であり、行政として考えていかなければならない問題であることを、今回改めて感じたところです。
「153,585,795」
この数字は、戸田市民が1年間で召し上がる食事のおおよその回数です(140,261人×1日3食×365日)。一人当たりで考えると、1年間に1,000食以上を口にしており、食が持つインパクトは非常に大きいことがわかりました。さらに、食は文化や情報、知識、五感、食糧などを分かち合うこと(Share)ができ、人や食材、場所、生産、雇用、健康、地域風土など、様々なものと結び付いていることから、社会性が高いことも実感したところです。
また、今回「孤食」に関して、大変興味深い話題を提供していただきました。一人で食事をする孤食は、世帯構造の変化などにより、高齢者の問題だけではなく、共働きの裕福な家庭や若者の単身世帯にも広がっているそうです。戸田市では、近年共働き世帯が増加し、単身世帯も多くなっているため他人事ではありません。家族と食事を共にする頻度が高い人は、野菜や果物の摂取量が多いなど食物摂取状況が良好であるとの調査結果があり、孤食の問題は今後考えていかなければならないと感じたところです。
この他にも、まちに愛着を呼ぶ食の事例などを紹介していただき、食を通じたまちづくりの可能性を考える貴重な機会となりました。戸田市として現状「食」に関してどのような問題を抱えているか、将来どのような問題が予想されるかなど、アンテナを広くして考えていきたいと思います。
(主任研究員 長谷川 昌之)