めるまが92(2019年1月10日配信)
~今月の目次~
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
実質的には歴史のある公民連携
前回は都道府県議会に限定して、過去の議会議事録から「公民連携」の動向を検討しました。今回は新聞記事から「公民連携」を探ってみます。この「公民連携」という言葉自体は、古くから登場しています。例えば、1985年2月26日の朝日新聞は「選挙協力など公民連携強化」と見出しがあります。同―記事は公民連携が一つのトピックスになると言及しています。
読者は分かると思いますが、同記事の公民連携は、公明党と民社党の連携になります。当時の「公民連携」は、今回とまったく違う文脈で使われています。その中で、2001年9月6日の朝日新聞は「多摩ニュータウン、4市の助役らでまちづくり協議会 11月にも設置」という見出しがあります。この記事の中で初めて「公民連携」という言葉が登場しています。
そのように考えると、2001年が公民連携のスタートと言えるかもしれません。なお、公民連携という言葉は強く使われていませんでしたが、当時は「産学官連携」という言葉が広く浸透していました。この産学官連携は公民連携と大きな差はありません。新聞記事の文脈から判断すると、産学官連携という語句は自然科学系の分野で使われる傾向があるようです。
このように考えると、公民連携は意外と歴史はあるのかもしれません。今日では「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(1999年)、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(2006年)など、公民連携を後押しする法律が整備されています。法的整備が揃いつつあります。公民連携は新しいステージに入ると言えそうです。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
積極的な視察の受入れ
現在、全国には50程度の自治体シンクタンク(都市シンクタンク)が組織されています。その中で、共通の課題となっている点としては、自治体シンクタンクの活動が内外に認知されていないといった情報発信・伝達に関するものが多くあります。このような中、政策研究所では「ホームページ」や「めるまが」での継続的な情報発信に加え、積極的に視察の受入れ等を行うことにより活動の見える化を進めています。
昨年、日経BP総研(日経BP社)により全自治体を対象とする行政視察の受入れに関する調査が行われ、2017年度の視察件数ランキングがホームページで取り上げられています。ここでは、人口規模ランキング(人口10万~30万人未満)で、「シティセールス(19件)」が第28位、「戸田市政策研究所(15件)」が第48位となっており、政策研究所の関連する取組が二つランクインしています。
また、二つの視察件数をまとめると、総合ランキングでもベスト50に入り、多くの自治体や議員の方々に注目をしていただいたことがわかります。ソフト事業である政策研究所の取組は、活動が見えにくい部分がありますので、視察にお越しいただいた方はもちろんのこと、視察後に政策研究所の取組を発信者として更に広めていただくことで、情報発信につながっているものと考えています。
視察の受入れは、対応する時間が本来の業務から離れてしまうなどのマイナス面はありますが、それを上回るだけの情報発信や新たな知見を得られる情報交換・収集の貴重な機会となります。今後も、できる限り視察の受入れを行うことによって活動の見える化を進めるとともに、外部から新たなヒントを得ることで成長し続ける組織でありたいと考えています。
【日経BP総研(全国自治体・視察件数ランキング2018)】
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/091800002/100200005/
(主任研究員 長谷川 昌之)
(3)戸田のここに注目!
郵便局と包括連携協定を締結しました
戸田市と郵便局は、地域・暮らしの安全・安心、災害対策、市政情報の発信など、さまざまな分野で連携するため、2018年11月26日に包括連携協定を締結しました。この協定の締結により、それぞれが有する資源を有効活用し、市民サービスの向上を図ります。
具体的な連携事項
戸田市と郵便局は、これまでも災害時の避難場所などの提供、地域住民の見守りなどの分野で連携してきましたが、今回の包括連携協定により、以下の事項も連携して取り組むこととなりました。
・公園内遊具の破損や倒木に関する情報提供
・ごみ集積所からの資源物の持ち去りに関する情報提供
・郵便局における行政情報の発信
・行政計画策定時の委員としての参加など
郵便ポストを活用し、避難所・避難場所情報を発信
協定の締結に伴い、避難場・避難場所のQRコードを戸田市内110カ所の郵便ポストに順次貼り付けています。スマートフォンなどのカメラで読み取ることで、市内の避難所や避難場所の情報が検索できますので、ぜひご活用ください。
(政策秘書室 橋田 真由美)
(4)戸田ゼミの取り組み
第6回(12月12日)の報告
第6回では、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)戸田公園駅の駅長に公民連携に関する講演をしていただきました。
JR東日本では、鉄道運営のノウハウや全国に展開しているネットワークを生かし、地方創生事業として自治体との連携を行っています。今回は、自治体との連携の事例を以下のとおり紹介していただき、戸田市においても実施が見込めそうな事例についてもご紹介いただきました。
仙台駅と仙台市との連携では、駅の東西自由通路を6メートルから16メートルへの拡幅を連携して実施したほか、仙台駅周辺地区の交通結節機能の強化も行っています。
青森・秋田の鉄道4社と誘客に関する連携協定では、沿線エリアを周遊する旅行商品の企画や、スタンプラリーなど共通イベントを開催しています。
新宿駅の商業複合施設と高速バス乗り場(バスタ新宿)との連携については、駅直結でそれぞれへのルートを確保しており、駅周辺の回遊性の向上と交流拠点の整備を行っています。
秋田県、秋田市との連携では、3者で連携協定を締結しています。これにより、県及び市は、急速に進む少子高齢化や人口減少に対応するコンパクトなまちづくりを進めていくとともに、JR東日本は、県及び市の総合戦略の趣旨及び取り組みを踏まえ、秋田駅周辺における自社用地を活用した事業を検討し、まちづくりを進めています。
駅からハイキングの事例では、特定の駅を出発点とし、市内の名所などを歩いて回るイベントの企画運営を自治体と協力して行っています。会員登録すると、JRのホームページから参加履歴の確認や歩いた距離に応じて抽選が行えるといった特典もあります。
栃木DC(デスティネーションキャンペーン)は、栃木県と連携したJRグループの大型観光企画となっており、様々な周遊ルートの提案やDCホームページから宿泊先の予約等も行うことが可能となっています。
自治体と公共交通機関であるJRは切っても切れない縁があります。地域に根ざした2者が連携・協力していくことで大きな効果を得られるのではないでしょうか。今後、ウィンウィンとなるような関係を築いていけるような連携手法を模索していければと思っております。
(研究員 千葉 尚樹)