めるまが89(2018年10月10日配信)
~今月の目次~
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
事業仕分けを条例化する
行政サービスの取捨選択に効果を上げたのが「事業仕分け」です。この「事業仕分け」という言葉にいい印象を持っていない方も多いと思います。事業仕分けとは「自治体の事業の必要性や実施等を公開の場で外部の視点を入れて問い直すことで、自治体の事業を再構築する取り組み」と言えます。非営利の政策シンクタンク「構想日本」が始めた手法です。
実は国の事業仕分けにより、「廃止」と決まった事業の多くが復活しています。例えば、ある年度は、事業仕分けにより、「廃止」「段階的廃止」「縮減」と判断された事業の約8割が復活したという報道があります。このようなことが相次いで起き、事業仕分けは失敗したという論調もあります。復活した理由は簡単です。事業仕分けが法的根拠を伴わないからです。
私は「事業仕分け」は評価しています。自治体が事業を絶対に減らしていくという意思があるならば、事業仕分けのような仕組みを条例化するとよいと考えています。条例に「毎年度事業を1割削減する」と書き込むのです。法的根拠をもち事業仕分けを進めることにより、廃止と決まった事業は復活できなくなります。復活した場合は「条例違反」となります。
「条例に数値目標を書き込むのはいかがなものか」という意見があります。実は私も同感です。ただし強制的に事業仕分けの実効性を担保するには、この手法しか思い当たりません。ちなみに「千代田区行財政改革に関する基本条例」の第4条は「経常収支比率を85パーセント程度にし、人件費比率を25パーセント程度にする」と明記しています。数値目標のある珍しい条例です。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
2018年度戸田市政策研究所の活動報告
戸田市政策研究所では、2018年度の取組の一つとして、目白大学と敬愛大学からインターンシップ実習生5名の受け入れをしました。
実習生は、8月1日(水曜)から9月19日(水曜)までの期間に約4週間市役所に来庁し、朝10時から夕方4時まで政策秘書室にて実習を行いました。実習は、政策研究所の研究補助や政策秘書室の業務補助のほか、自ら研究テーマを設定し、そのテーマの研究に必要なデータの収集、現地の取材、担当課のヒアリングなどを行い、最終日には、市長、副市長に研究成果の発表や市に対する提言をしました。
今年度は、
・「戸田市における災害発生後を視野に入れた防災対策の再検討~市民への働きかけについて~」
・「新たな「いいとだマップ」の作成案~トイレマップを作成してもっと便利に~」
・「戸田市における若年層の交流人口増加策~彩湖・道満グリーンパークを活用して~」
・「戸田市におけるボール公園芝生化に関する提言~行政と市民の協働に着目して~」
・「戸田オールを用いた家庭ごみ削減方法」
の五つのテーマで研究が行われました。
最終日、提言の発表を終えた実習生からは、「充実した日々で、貴重な経験となった」と感想をいただきました。
大学生のインターンシップ実習生の受け入れは、大学生にとっての経験を提供するにとどまらず、大学や大学生に戸田市政策研究所の取組を知ってもらうPRの機会や、大学生からの提言を収集できるなど受け入れる側にも効果がある事業です。
今年度の提言においても、大学生らしい柔軟で自由な発想の提言があり、今後の事業展開に期待がもてる提言となりました。
(主任研究員 川上 裕丈)
(3)戸田のここに注目!
戸田市は民間事業者との連携を推進しています
戸田市では、地域課題の解決やまちづくりの発展のため、さまざまな分野で民間事業者と連携し、互いの資源を有効活用した取り組みを行っています。新たに民間事業者と協定を締結し推進している取り組みを紹介します。
株式会社セブン-イレブン・ジャパンとの包括連携協定
高齢者の見守りや防災・防犯などの多岐にわたる分野で連携していくため、包括連携協定を締結しました。見守り活動のほか、不審者に声を掛けられたりした子どもが駆け込める「こども110番の家」の設置を推進するなど、さまざまな分野で市民サービスの向上に努めていきます。
創志学園グループとの包括連携協定
幼児教育から大学教育まで幅広くサポートする創志学園グループと、「子育て支援」「教育」「職員の人材開発」を中心に相互協力を図る包括連携協定を締結しました。特に、教育の分野では、不登校の子どもへの支援などに関して市教育委員会がこども教育支援財団と連携協定を締結するなど、子どもの健全育成に向けて、さらに取り組みを進めていきます。
株式会社ゼンリンとの災害時の地図製品等の供給等に関する協定
この協定により、災害時に、株式会社ゼンリンから最新の住宅地図や日頃から利用できる市全域を網羅した広域図、電子地図データなどを提供していただけるようになりました。また、平常時から防災に関する情報交換を行うとともに、相互の連携体制を整備し、さらなる地域の防災力の向上を目指します。
(政策秘書室 有吉 正憲)
(4)戸田ゼミの取り組み
第4回(9月20日)の報告
第4回では、株式会社NTTドコモ様より「NTTドコモにおける地方創生ソリューションのご紹介」と題して講演をしていただきました。
NTTドコモは言わずと知れた携帯電話通信会社です。スマホに代表されるモバイル通信事業から始まり、近年ではdマーケットやdメニューといった総合サービスにも力を入れています。さらに、地方創生事業として自治体との連携により産業への貢献、社会的課題の解決を通じて、付加価値を共に「協創」していく取り組みを行っています。
協創の事例としては、ICTを活用したまちづくりの推進、学習用タブレットの活用、高齢者の安否確認・健康管理、運転技術と音声エージェント技術の開発など多岐にわたります。これらは全て、NTTドコモの強みである通信網を生かしたものとなっています。
実際に自治体との連携により実証実験を行っているものも多くあります。神戸市との連携では、小学校5校、800名の小学生に電子タグを配布し、施設(約130カ所)、民間事業者(49社、1,000名)が電子タグの検知器を持つことで、まち全体での見守りを実施しました。東松島市との連携では、カキ養殖における海水温のチェックを人力で行っていたものから、ブイに通信機能を持たせ自動チェック化することで、約1時間の時間節約と約20Lの燃料節約になるそうです。また、横浜市との連携では、AIを用いたチャットボットによるごみ分別案内を実施しており、問い合わせ対応に追われていた稼働削減に加え、市民との親近感醸成にも活躍中とのことです。
こういった事例は、戸田市においても活用が可能なものが多くあると思います。しかし、同じことをするだけではなく、戸田市に必要な形にしていくことで、さらに効果的な取り組みとなるのではないでしょうか。今回の講義で紹介していただいた事例については、今後の戸田ゼミを進めるうえで検討していきたいと思っております。
(研究員 千葉 尚樹)