めるまが78(2017年10月10日配信)
~今月の目次~
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(5)戸田市政策研究所からのお知らせ
(1)政策形成アドバイザーの徒然
「行政の継続性」は重要
以前もメルマガで書いたかもしれませんが、再度、述べておきたいことがあります。今回、言いたいことは「行政の継続性の重要さ」です。自治体の地域ブランドを事例に言及します。盛岡市や宇都宮市、塩尻市などは、持続的に地域ブランドに取り組むため、地域ブランドに関する行政計画を策定しています。この取り組みは、とてもよいと考えています。
その理由の一つは、行政計画は持続性が担保されるからです。筆者の調査によると、地域ブランド計画を用意している自治体は、人口減少率が低いという傾向があります。もちろん、すべての事例とは言えません。あくまでも傾向です。盛岡市には「盛岡ブランド推進計画」があります。2010年と2015年にかけて盛岡市はマイナス0.2ポイントほど人口が減少していますが、岩手県全体では盛岡市を大きく上回るマイナス3.7ポイントの減少となっています。
宇都宮市には「宇都宮ブランド戦略指針」があります。同市は2010年と2015年にかけて1.4ポイントほど人口が増加していますが、栃木県全体ではマイナス1.6ポイントも減少させています。このように地域ブランドを行政計画に位置付けている自治体は、人口の増加率が維持できているか、他事例と比較して相対的に人口減少率が鈍化している傾向が見られます。
盛岡市や宇都宮市の事例を紹介すると、たまに「これらの自治体は県庁所在地だから」と指摘されます。そこで、県庁所在地ではない塩尻市などに目を転じると、盛岡市や宇都宮市と同様な結果が見られます。塩尻市は「塩尻『地域ブランド』戦略」があります。なお、すべてが該当するというわけではありません。あくまでも「傾向が見られる」ということです。
行政は継続性が重要です。その意味で、地域のブランド化を行政計画に落とし込んでおく意義は大きいてしょう。これが「地に足の着いた取り組み」につながっていきます。しかし、多くの自治体は地域ブランドの実現に向けて、地に足の着いた取り組みを実施してきませんでした。地域ブランドは地域を搔き乱しただけで、ブームは去りました。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
おしゃれな都市づくり学
「おしゃれは古臭くて死語」、「おしゃれという言葉を使うことこそおしゃれでない」「おしゃれの定義は?」
公益財団法人日本都市センターと戸田市政策研究所との共同研究のために設置された「住民がつくるおしゃれなまち研究会」の中で発せられた委員からのご意見。卯月盛夫早稲田大学社会科学総合学術院教授を座長に、委員は、マーケティング、景観、環境デザイン、地域政策などの第一線で活躍されている方々だけに、その一言一言に重みを感じる一方で、戸田市について真剣に議論していただいていることが大変ありがたく、かつとても刺激的である。
共同研究のキーワードは「おしゃれ」。住民がおしゃれなまちづくりに自発的に参画することにより、ひいてはシビックプライドの醸成を狙いとしている。さらに、この取り組みが同じ目的を持つ全国の都市で活用できるといった汎用性も高めなければならない。
利便性や快適性といった生活的魅力は高いものの、もっとおしゃれな都市に発展するポテンシャルのある戸田市。水辺環境を活かし都会の喧噪から解放される憩いの空間がある都市。休日に若い女性が好んで訪れる華やかさとムーディーな雰囲気を併せ持つ都市。若者たちの自由な発想が尊重され、起業やイベント開催など寛容性と多様性のある都市。すべての世代のライフスタイル実現が保障され、日々の生活が充実する都市など、この共同研究から「戸田市流のおしゃれさ」を多角的に導出していきたい。
自治体シンクタンクが真剣に「おしゃれ」を研究することは、おそらく全国初の取り組みであろう。それ故、全国からの注目度も高いが、そのプレッシャーを推進力に替え、楽しみながら研究を進めていきたい。
(所長 梶山 浩)
(3)戸田のここに注目!
関東初!行政連携モデル「ママスクエア北戸田店」がオープン!
平均年齢が22年連続で埼玉県一若く(埼玉県町(丁)字別人口調査)、子育て世代も多い戸田市。市では、女性が子育てしながらもキャリア形成ができる環境整備に積極的に取り組んでいます。この取り組みの一つとして、この度、小さな子を育てる母親(ママ)が子どもと離れずに働くことができるオフィスとして株式会社ママスクエアを誘致し、2017年10月5日に「ママスクエア北戸田店」がオープンしましたのでご紹介します。
誘致に至った背景:「市内ママや市内企業のニーズ調査」
先に実施した市内女性の就業環境の分析及び市内事業者の訪問調査の結果、市内ママのニーズ「子どもの面倒を見ながら短時間で働きたい」「事務系一般職で働きたい」との思いと、市内企業のニーズ「人手不足で特に製造業の現場作業員が不足」「短時間就労のニーズは低い」との間にミスマッチが生じていることが判明。これらを解消し、結婚や出産を理由に離職した女性のキャリアブランクを減らすため、子どもの見守り機能を併設した短時間勤務のできる事業所として株式会社ママスクエアを誘致しました。
ママスクエアとは
ママが子どもと離れずに働ける、在宅ワークとも違う新しいワーキングモデルです。ワーキングスペースからガラス越しに見える位置にキッズスペースを併設し、子どもが楽しく過ごせるよう、またママが安心して働けるように専任のキッズサポートスタッフが常駐します。「子育ても仕事も頑張りたい」そんなママが無理なく働ける場所となっています。
(政策秘書室 生出 豊)
(4)戸田ゼミの取り組み
第4回(9月12日)の報告
第4回では、株式会社読売広告社様より「街の評価を測る Civic Pride Researchとは」と題して講演をしていただきました。
「Civic Pride(シビックプライド)」を日本語に単純に訳すと「住民としての(都市に対する)誇り」になります。しかし、日本語の「郷土愛」とは少しニュアンスが異なります。この違いとしては、シビックプライドには自分自身が都市を構成する一員であることを自覚し、都市をより良い場所にするための「当事者意識」を伴う点が考えられます。
最近では、シビックプライドに大きな注目が集まり、様々な自治体でシビックプライドの醸成に向けて動き出しています。ただ、同時に住民の内面的な部分であるシビックプライドをどのように測定・評価していくかということも課題となっています。
そこで、今回の講演では読売広告社様が研究開発したシビックプライド項目とその構造図、抑えておきたいポイントなどを紹介していただきました。講義では(1)体系的に見える化すること(2)自分の街の評価をどのように測るか決めておくこと(3)「愛着」「共感」「誇り」のどこに力をおいたコミュニケーション施策を展開するか考えていくこと――などを紹介していただきました。また、旧住民と新住民、大型マンションの住民で捉え方に違いがあることなども大変参考になったところです。
調査研究したうえで実際の事業を展開していくことは、非常に重要です。しかし、それだけではなくしっかりとした測定・評価をすることで、更に効果的な取組につながります。今回の講義で紹介していただいたポイントについては、今後事業を進めるうえで検討していきたいと思っています。
第5回(10月10日)の案内
第5は、前回の講演を踏まえ、「シビックプライド」について参加者同士で意見交換をしていきます。戸田市としてのシビックプライド指標は何かなど、戸田市流のシビックプライドについて考えたいと思っています。
(主任研究員 長谷川 昌之)
(5)戸田政策研究所からのお知らせ
9月30日付けで所長である石津副市長が退任いたしました。今後は、一時的に副所長(政策秘書室長)が所長の職務を行うことで、政策研究所の運営を進めてまいります。職員3名、政策形成アドバイザー1名の計4名による少数体制となりますが、業務を滞らせることなく積極的に取り組みますので、引き続きよろしくお願いいたします。