めるまが57(2015年11月10日配信)
~今月の目次~
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田市政策研究所研究員の徒然
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
雇用の確保が社会増につながる
めるまが7月号では社会動態を言及しました。そして社会増について検討しました。社会増とは「一定期間(多くの場合は1年間になります)において、転入者が転出者を上回った状態」になります(転入者数>転出者数)。自分たちの自治体に「他市区町村から引越して来てもらう」という転入者増加を進めることに加え、実は転出者を抑える取組みも大事です。転出者を抑えるためには、まずは魅力ある自治体を創っていくことが求められます。
しかし「魅力ある自治体」と言っても、住民の価値観は一人ずつ異なります。なかなか難しい課題です。そこで一般的な話をします。地方圏において人口が増加した市町村を観察すると、農業や観光業をはじめ、製造業や商業の集積等が共通項として得られます。つまり「雇用」があるのです。当たり前ですが、雇用がある自治体のほうが人口を増加させているのです。雇用があれば転入者が増加し、転出者が減少する傾向が強く見受けられます。
これらの自治体は昼夜人口比率が1倍を超え、周辺自治体に比べて有効求人倍率が高いなど雇用の機会が多く確保されています。この「雇用」を創りだすことが自治体には求められます。雇用を創りだすために「起業支援」に力を入れる自治体があります。しかし起業支援の場合は、ある程度、起業した企業の規模が大きくなると、その自治体から転出し、市場規模の大きい都市圏に移転する傾向が少なくありません。この点は注意が必要です。
そのように考えると起業支援より、以前からずっと地元に根付いている企業の雇用吸収力を高めていくほうが無難かもしれません。地元企業の意向を把握し1人でも2人でも多く雇ってもらうような事業を展開していきます。そうすることで、自治体全体の雇用力を拡大していくことにつながります。なお起業支援を否定しているわけではありません。起業していつまでも留まってもらえる魅力ある地域を創っていくことが求められます。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
第3回自治体シンクタンク研究交流会議の報告
先週11月6日、7日の2日間にかけて、第3回自治体シンクタンク研究交流会議を開催しました。この研究交流会議は、自治体シンクタンクの在り方や共通課題の改善策について議論し、気づきと励ましのネットワークをつくることを目的として開催しています。
今回、北は青森県、南は熊本県から多くの自治体シンクタンクや関係者に参加していただくことができ、今まで接点のなかった方々が互いの情報を交換する有意義な会となりました。会議終了後、参加者から「今後のヒントがたくさん見つかった。」との温かいお言葉もいただき、その一言だけで開催した甲斐があったのではないかと感じております。
自治体シンクタンクには、「自治体の政策創出において徹底的な調査・研究を行い、課題解決の提言を行う。」という使命があります。しかし、自治体によって課題は異なり、自治体シンクタンクとして共通の正解があるわけではありません。試行錯誤を繰り返しながらも最善の道を探求するためには、こうした機会が必要であり、今後も今回得たつながりを大事にしていきたいと考えております。
また、会議の終わりに、来年度の自治体シンクタンク研究交流会議の開催地が佐世保市に決定しました。今回以上に実り多い会になると思いますので、ぜひ参加に向けてご検討いただけると幸いです。
(研究員 長谷川 昌之)
(3)戸田市政策研究所研究員の徒然
エッジシティ戸田~優位性を最大限に生かして~
中国政府は人口抑制のため1979年から実施してきた「一人っ子政策」に終止符を打った。世界最大の約13億6千万人を抱える中国においても、2012年に15歳から59歳の人口が減少に転じた一方で、2014年には60歳以上の人口比率が15.5パーセントに達し、この状態が続くと2050年には35パーセントまで増加すると予測されている。この危機的状況を脱するため、2014年からは夫婦のどちらかが一人っ子であれば2人目の子どもの出産を認める緩和策が打ち出されたが、経済的負担等の理由から都市部では2人目を望まない夫婦も多いようだ。
無論、日本においても人口減少や少子化、高齢化による危機的状況に直面している。2014年に内閣府「選択する未来」委員会が報告している具体策を2020年までに集中的に実行することで、現在の2060年人口予測8,600万人を1億人程度とすること。また合計特殊出生率を2012年の1.41から2060年には2.07以上に引き上げることを目指している。
このような中、戸田市では10月に策定した「戸田市まち・ひと・しごと創生総合戦略」「同戦略に係る人口ビジョン」において、若い世代の転出抑制、子育て支援、雇用環境の整備、柔軟なまちの基盤づくり等の施策を進めることで、現在の2060年人口予測11万6千人を14万9千人に、合計特殊出生率は2012年の1.55から2040年までに1.80にアップさせ2060年までキープすることを目指している。2014年の出生数は1,571人で、都市部の他自治体と比較してかなり多いが、経済的理由から「理想の子どもの数」と「予定の子どもの数」に開きがあることも見逃せない。この開きをうめるための施策展開が出生率アップのカギを握る。さらには、東京都の有配偶出生率は全国平均であるのに対し未婚率は非常に高い。つまり、都心には生涯のパートナーを求めた若者が集まり、結婚すると経済的理由から東京都の周縁都市(エッジシティ)に転出するという構図が浮かび上がる。これら東京転出組の選択肢として、選ばれる自治体の4要素と言える1.利便性、2.住環境、3.教育環境、4.安心・安全が整った戸田市のポテンシャルは魅力的である。定住人口増加、出生率のアップにはこれら若者への転入誘発剤となる施策展開が必要不可欠と言えるのではないか。
(副所長 梶山 浩)
(4)戸田ゼミの取り組み
第6回(10月22日)の報告
第6回は、第5回に引き続き、庁内全職員を対象とした公開講座として「効果的な情報配信の手法とは」をテーマに、日本最大級のポータルサイトを運営する企業から講演をいただきました。
講義では、埼玉県との連携事業を通した事例の紹介や、ユーザーに求められるコンテンツ、情報の加工・編集のポイント等を分かり易くご講義いただきました。
広告の種類や受信する媒体によって情報発信の手法が大きく変わることに驚いた、ターゲットの設定やツールの選択等、今後の業務生かしたい、といった意見があり、各自気づきを得ることができた貴重な講義となりました。
第7回(11月13日)の案内
第7回は、第4回の市長講話、第5回及び第6回の公開講座で学んだ内容を基に、今年度のテーマである「イベントによるシティセールス」を踏まえたグループワークを行います。年度当初から一歩も二歩もレベルアップしたゼミ生のディスカッションに大いに期待しています。
日時:11月13日、午後6時から7時30分
場所:市役所1階東側休憩室
(研究員 川田 哲朗)