めるまが56(2015年10月9日配信)
~今月の目次~
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田市政策研究所研究員の徒然
(4)戸田ゼミの取り組み
(5)第3回自治体シンクタンク研究交流会議のご案内
(1)政策形成アドバイザーの徒然
死亡数を減らす取組みも自然増につながる
めるまが6月号では、人口を増やす一つの視点として「自然増」について紹介しました。自然増とは「出生数が死亡数を上回った状態」と定義しました(出生数>死亡数)。ここでは出生数に注目しました。しかし実は、死亡数を減らす取組みも重要です。例えば、一人でも多くの高齢者にいつまでも元気で長生きしてもらうことが考えられます。しかし高齢者の長生きは死亡時期を遅らせるだけであり、限界がきます(いつかは死んでしまいます)。
死亡の原因は、加齢現象が進み老衰によって死亡する「自然死」ばかりではありません。例えば、5~14歳では不慮の事故と悪性新生物が死因の原因となっています。不慮の事故とは交通事故に限りません。家庭内事故もあります。家庭内事故とは、転倒・転落、不慮の溺死及び溺水などが該当します。また、悪性新生物とは一般的には「癌」になります。この不慮の事故や悪性新生物を少なくしていくことも、自然増(の可能性)を高めます。
15~34歳は自殺と不慮の事故が多くなります。35~49歳では悪性新生物と自殺という順序になります。自殺を防止していくことも、自治体は自然増という目的ではなく、自治体の本来の目的である「住民の福祉の増進」という観点から取り組むべき課題です。2014年は約2万5千人が自殺で亡くなっています(警察庁発表)。なお、日本の自殺数は警察庁と厚生労働省の発表では数字が異なります。それは定義が異なるからです。
自然増を達成するためには、1.出生数を増やす事業を進めると同時に、2.死亡数を減少させる取組みを進めていく必要があります。昨今の自治体の地方版総合戦略を観察すると「出生数の増加」ばかりに注目が集まっています。もちろん、この視点も大切ですが、さらに一歩踏み込み死亡数の減少にも力を入れていくべきと考えます。この取り組みは、自治体の使命である「住民の福祉の増進」の王道を行く活動と思います。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
総務省発表の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2015年1月1日現在)によると、全国市区の65 歳以上人口(=老年人口)の割合は、小さい順に、沖縄県豊見城市(15.36パーセント)、愛知県長久手市(15.39パーセント)、千葉県浦安市(15.72パーセント)に続き、戸田市は15.84パーセントで全国市区中4 番目に老年人口の割合が少ない。このように現在は”超高齢社会”とは無縁に見えるが、若い世代が多い構成比であるが故、その分、近い将来、老年人口の増加率は急激に上昇することが推計されている。これが、2009年度から2年間で本研究所が取り組んだ「急速な高齢化が戸田市へもたらす影響に関する研究~西暦2035年の高齢社会に備え戸田市は何を為すべきか~」の経緯である。「備えあれば憂いなし」。自治体には将来を見込んだ先手必勝の政策展開が求められている。
この考えに倣い、2015年度の先手必勝の一手は”少子化対策”である。2013年の合計特殊出生率が1.47と都市部としては高い割合であり、前掲総務省発表によると、0歳から14歳人口(=年少人口)の割合は15.55パーセント(1位は沖縄県豊見城市の20.38パーセント)とこちらも高い構成割合の戸田市。しかし、年少人口は2040年には12パーセント弱となり、その後も徐々に減少が進行し2060年には10パーセントまで減少すると推計されている。そのため、2015 年度は”少子化”に着眼し、現在策定中の「まち・ひと・しごと創生総合戦略に係る人口ビジョン」を基に、財政影響や保育園、幼稚園、小・中学校への影響を探っていく。
人口構成の増減が招く地域課題には長期的視点に立った早め早めの対策が必要であり、手遅れから生じる地域衰退はあってはならない。正確なデータに基づく地域分析とその結果から得られた効果的な政策提言こそが、地方創生時代の自治体シンクタンクに求められているミッションと言えよう。
(副所長 梶山 浩)
(3)戸田市政策研究所研究員の徒然
先日、総合防災訓練に家族全員で参加しました。防災訓練は、午前8時30分から開始すると事前にわかっていたため、今回は「普段どおりの日曜日を過ごしているときに地震が発生したと考えて行動しよう。」と家族で話をしていました。しかし、当日は早朝から子どもの鳴き声という名のサイレンが予定よりも早く鳴ってしまい、余裕を持って朝食をとってから訓練に臨むこととなりました。
さて、定刻に緊急地震速報が防災行政無線から流れて訓練開始。放送後、1分間の強い地震に襲われていると想定して「身を守る行動を」と思ったのですが、どこに隠れたらよいかで迷い、一つ目の反省。どの部屋にいても倒れてくるものがない場所をつくろうと気づかされました。また、その後家を出るときに防災セットがクローゼットの奥にしまっていることに気づき、二つ目の反省。今回、家の中での対策もできていないことがわかり、それだけでも訓練に参加した甲斐がありました。
訓練会場に到着した後は、自主防災会の方々や消防職員の指導の下、AED・心肺蘇生法訓練や応急処置訓練などを学びました。しかし、周りを見渡すと参加者の中で数えるほどしか知り合いがおらず、地域での知り合いが少ないことを訓練で気づかされ、3つ目の反省。
以前「人生80年の現代では、仕事を始めてから定年までの勤務時間と、定年から80歳までの起床時間がともに約10万時間となる」との記事を目にしたことがあります。防災に限らず、地域でのつながりを深めていくことの重要さも改めて実感し、反省の多い日曜日となりました。
(研究員 長谷川 昌之)
(4)戸田ゼミの取り組み
第5回(10月8日)の報告
第5回は、政策形成アドバイザーから「シティセールス」に関する講演をしていただきました。シティセールスを行う「目的」は何か。シティセールスという漠然とした概念の中から、その目的や本質を見出すためのヒントを学びました。また、全国の自治体政策の先進事例などを聴くことで、「新しい発想」に向けて視野が広がる貴重な機会となりました。
第6回(10月22日)の案内
第6回は、外部講師を招いて「効果的な情報配信の手法」に関する講演をしていただきます。民間企業と自治体が行う情報発信の差は何か。日本最大級のポータルサイトを運営する某企業から、多角的な政策視点や外部発信への有効な手段等を学びます。
日時:10月22日、午後6時から7時20分(予定)
場所:市役所5階大会議室C
定員に限りがありますので、参加を希望される方は事前にご連絡ください。
(研究員 柄澤 映)
(5)第3回自治体シンクタンク研究交流会議のご案内
自治体シンクタンクの在り方や共通課題の改善策について議論し、気づきと励ましのネットワークをつくる「自治体シンクタンク研究交流会議」を開催します。今回の会議では、地方創生に向けた自治体シンクタンクの役割や研究から事業化への課題等を中心に議論する予定です。
全国の自治体シンクタンクや関係者が一堂に会する貴重な機会となりますので、積極的なご参加をお待ちしています。
日時:11月6日午後1時~午後5時45分、7日午前9時30分~午後0時30分
場所:(1日目)市役所5階大会議室、(2日目)上戸田地域交流センター(あいパル)1階多目的室
(研究員 長谷川 昌之)