めるまが105(2020年3月10日配信)
今月の目次
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
公民連携の前に検討すべきこと
今年度は公民連携を中心に考えてきました。問題提起を込めて伝えておきたいことがあります。それは「行政の仕事が減れば、公民連携は必要ないかもしれない」という論点です。現在、行政の仕事が拡大しています。一方で行政資源は縮小しています。その結果、大きなギャップが生じています。ギャップを埋めるために公民連携が進む一要因となっています。
筆者は「政策公害」という概念を提示しています。政策公害とは「地方自治体の政策づくりや政策実施が結果として、自治体職員や地域住民をはじめ様々な分野に外部不経済をもたらす」と定義しています。多すぎる政策が「公害化」している現状があります。そして多すぎる政策に対処できないため、民間の活力に依存している現状が少なからずあります。
現在は縮小時代に入っています。縮小時代は、政策を減らさなくては(公的部門を縮小しなくては)、自治体運営の持続性はありません。いまは多すぎる政策が公害化している現状があります。政策公害の定義で記した外部不経済とは、自治体職員の療養休暇の増加や自治体職員のモチベーションの低下、また当初意図した政策効果があらわれないなどがあります。
もし、行政の仕事が減少していくのならば、公民連携に取り組む必要はないかもしれません(と言っても、民間の思考を入れる重要性は間違いなくあります)。現在は、多くの地方自治体が背伸びしすぎているように感じます。この観点で考えると、公民連携も大切ですが、まずは地方自治体の多すぎる政策を減らしていく取り組みも重要でしょう。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
施政方針
2020年3月戸田市議会定例会で市長の施政方針演説が行われ、2020年度の市政運営の基本的な考え方や主要な施策などについての説明を行いました。
政策研究所では、市長公約の進行管理を所管しており、総合振興計画をはじめとした各種計画やこれまでの市の施策などと整合性を図りながら進めています。調整の中で改めて感じることは各種事業実施等には関係各課との連携が必要となるものが多いことです。事業実施や課題解決に公民連携も有効な手法の一つですが、その前に庁内連携も同様に重要であり、それらをコーディネートしながら事業実施に至ります。
こうして計画的に物事を進めてきたところで、今般の新型コロナウイルス対応。イベントの中止、学校の休業、議会縮小などこれまでにないことが起きており、感染拡大によっては業務継続できるか否か。また、振り返れば昨年の台風第19号においても大きな被害が発生しはじめての避難所開設などその対応が現在でも続いています。
言うまでもなく、これからは災害や感染症などは常に起こるものとして頭に入れておきながら業務を進めていく必要があります。そして、例えば災害協定などの公民連携、体制や対応策の構築など市全体での組織運営能力及び政策形成能力の向上がますます重要になってくるのではないでしょうか。
施政方針という新年度へのスタート時に、自然の脅威にさらされているなか改めて大きく物事を考えていかなければと再認識したところです。
(副所長 櫻井 聡)
(3)戸田のここに注目!
防犯活動報告 より住みやすいまちにするために
私たちのまちが安全・安心に暮らせるよう、戸田市ではさまざまな防犯活動に取り組んでいます。皆さんのちょっとした防犯意識で、犯罪を未然に防げることもありますので、取り組みの一部を紹介します。
見守り防犯カメラの導入
防犯対策をより推進するため、各小学校区の通学路を中心に、市内全域に「見守り防犯カメラ」の設置を行います。また、位置情報通信機器「ビーコン」を設置し、子どもの安全対策をさらに強化していきます。(2021年4月稼働見込み)
委託警備員による防犯啓発活動
2019年10月から自宅を訪問し、啓発チラシなどを渡しながら、振り込め詐欺や自転車盗などへの注意を呼び掛ける活動を開始しました。委託警備員は紺色の制服の上に、「街頭防犯対策業務」と書かれたベストを着用しています。
自転車盗難対策
短時間の駐輪時でも、盗難にあわないよう、2種類以上の鍵をかける「ツーロック」の実施を呼びかけています。自転車盗難以外にも、自転車のカゴに置きっぱなしにした財布やバッグ、購入済商品などが短時間で盗まれる被害もあります。そこで、自転車盗難防止のキャンペーンや小学生への自転車安全運転教室など、鍵の配布を含めた施錠の啓発を実施しています。
(政策秘書室 佐竹 菜々子)
(4)戸田ゼミの取り組み
第8回(2月25日)の報告
第8回では、中野市政策研究所の政策アドバイザーである板倉先生をお招きし、「誰得ですか?デザイン経営」と題して昨今話題となることが多い、デザイン思考やその目的や活かし方などを中心に講義をしていただきました。
「デザイン」には、「意匠」などの形をつくることだけではなく、「設計」などの計画や策定することの意味があります。そのため、「デザイン」とヨコ文字を使われると分かりにくい部分はありますが、デザインを「アート」と混合せず、あくまで手法の一つであるとの認識が必要と説明がありました。
また、今回は、デザイン思考を「要求される機能を合理的に具現化すること」と仮の定義付けを行うことで、普段の業務で進めているPdcaの考え方と結び付けたところです。問題の発見や目的、対象などを明確化し、自分事として捉え、ストーリーを持って考えていくことが必要だと学びました。
さらに、デザイン経営には、チームで行うことが重要であるということも分かりました。ゼミの中では、「人が中心」「定義」「仮説」「柔軟性」「問題解決」「組織構成」「具現化」「柔軟性」の8つのキーワードを、参加者が意見を出しながらどの順番で進めると効果的かを考える機会なども提供していただき、デザイン経営を自分事として考えるきっかけになりました。今後「デザイン思考」については、調査研究を進める上での一つの考え方として、活かしていきたいと思います。
最後に、今回の戸田ゼミで2008年の開催からちょうど100回目となりました(めるまがを書いていて気づきました)。今後も、職員の政策形成能力を高めるため、どのような取組が効果的であり楽しく学べるかを考え、ゼミの内容を検討していきたいと思います。
(主任研究員 長谷川 昌之)