めるまが102(2019年12月10日配信)
今月の目次
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
公民連携の持続性を考える
縮小時代に、健全な自治体運営を進めていく一つの視点が「公民連携」です。筆者の定義は「行政と民間が相互に連携して住民サービスを提供することにより、行政改革の推進、民間の利益拡大に加え、住民サービスの向上や地域活性化等を目指す取り組み」です。この民間とは企業だけではなく、大学や地域住民など、自治体外の全ての主体が当てはまります。
公民連携を持続的に進めるためには、行政にも民間にもメリットがあり、かつ住民や地域にとってもプラスとなる取り組みを意識しなくてはいけません(現実的には難しいと思いますが、それを分かった上で言及しています)。公民連携に関係する全ての主体にメリットがあってこそ、公民連携は継続的に発展していきます。この点を常に考える必要があります。
公民連携の持続性を担保する一手段として、条例化もあるでしょう。大東市(大阪府)は「大東市公民連携に関する条例」を制定しています(2018年3月23日)。現時点では、大東市しか条例化していません。条例にすることは、自治体の意思を示すことになります。自治体として責任を持って、公民連携を進めていく意思表示となります。意義が大きいものです。
公的部門に参入(参加)を検討する「民」にとっては、条例化しているほうが安心でしょう。公民連携の条例があることにより、首長が変わったら、突然「公民連携はやめた」という状況を防ぐことができます。議会で条例が廃止にならない限りは、公民連携は進んでいくことになります。つまり条例化は、「民」の参入(参加)を促進する意味合いもあります。
話は変わりますが、首長が変わった途端、推進していたシティプロモーションが突如「終了」という事例を何度か耳にしました。確かに、それも民意ですから、仕方ない気もします。しかし、これでは行政の継続性がなくなります。政策は中長期的に実施してこそ効果がでてくるものです。その意味では、しっかりと条例化して継続的に取り組むことが求められます。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
「第7回自治体シンクタンク研究交流会議in豊中」に参加
先月、自治体シンクタンク研究交流会議が開催され、全国の自治体シンクタンク関係者が一堂に会しました。同会議は、(1)自治体シンクタンクの在り方や共通課題の改善方策等について知見を共有すること、(2)組織運営能力及び政策形成能力の向上を図ること、(3)自治体シンクタンク同士の気づきと励ましのネットワークをつくりあげること――の三つを目的として2013年から開催されています。
7回目を数える今年は、「SDGsから読み解く~これからの自治体シンクタンクに求められる政策形成能力とは~」を全体のテーマとして豊中市(大阪府)で開催されました。今回の会議を通じてSDGsに関する理解を深めることができ、自治体シンクタンクの取組とも関係していることがわかりました。
SDGsには、基本理念の一つに「Transform(変革)」があります。変革を起こすためには、既存の延長線上で取り組んでいくのではなく、理想を描き、それを実現させるためにどうすればよいかを考える「バックキャスティング的思考」が必要です。この考え方は、自治体シンクタンクの調査研究では常に求められてきたものであり、関連性なども理解することができました。
また、SDGsのもう一つの基本理念「誰一人取り残さない」は、自治体の根底にあるものです。前回のめるまが(政策形成アドバイザーの徒然)では「自治体そのものがSDGs」と紹介しています。今後もSDGsマインドを常に持ち、業務に取り組んでいきたいと今回の会議に参加して改めて感じたところです。
次回(第8回)会議は、2020年11月に港区(東京都)で開催予定との案内がありました。東京2020オリンピック・パラリンピック後の開催であり、ビッグイベントを通じた変化なども気になるところです。興味のある方は、次回参加してみてはいかがでしょうか。
(主任研究員 長谷川 昌之)
(3)戸田のここに注目!
「三井住友海上火災保険株式会社との包括連携協定」を締結しました
戸田市では、さまざまな企業と連携を図り市民サービスの向上や施策効果の拡大に役立てています。このたび県内で初めて三井住友海上火災保険株式会社と包括連携協定を締結し、11月に調印式を開催しました。その協定の概要を紹介します。
自転車交通安全教室へ出展
先月、市内の小学校校庭で開催された市主催の自転車交通安全教室にブースを出展していただき、踏み間違い事故防止装置の体験や自転車の運転サポートアプリの紹介をしていただきました。
市民・市内事業者向けセミナーの実施
市民や市内事業者の要望に応じて、三井住友海上火災保険株式会社の社員などが講師として出向き、専門知識を生かした講義やセミナーを無償で実施します。
その他の連携事項
・高齢者や障がい者、道路の損傷など、市民やまちの見守り
・メンタルヘルスケア対策、市職員向け研修の支援など
(政策秘書室 石井 正義)
(4)戸田ゼミの取り組み
第6回(11月27日)の報告
第6回では、久しぶりにゼミ参加者同士で意見交換を行いました。テーマは、「将来的な行政分野の課題」とし、2040年前後の将来推計値から推計どおりに進んだ場合の状況や課題について議論しました。
まず、政策形成アドバイザーからの問題提示として「2040年ころの戸田市」に関するテストを行いました。2040年時点で、参加者は途中で辞めない限り現役の職員として勤めている状況です。その状況を踏まえ、「自分事」として将来の状況を考えました。
国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計では、2015年と比較して2040年も人口が増加しています。ただ、人口構成を見ると労働力人口は減少し、老年人口割合が急激に増加していきます。以前、政策研究所では2035年の将来予測に取り組みましたが、今回のゼミを通じて「数」だけでなく「割合」もしっかりと把握していくことの重要性を改めて確認しました。
また、人口・高齢化・産業・医療・介護・保育など、2040年における全国の市町村の姿がわかる「未来カルテ」の情報を利用し、財政状況や産業構成、介護や認知症患者などの状況も確認しました。ここでは、財政状況は2025年に歳出が歳入を上回り、2035年に44億円のマイナスを示しています。また、2040年の介護受給者数は6,926人、認知症患者数は7,214人との予測があり、今よりも2倍以上の増加が示されていることを共有しました。
戸田市は、37年連続して地方交付税の不交付団体で、平均年齢が24年連続して県内一若いまちです。この状況から考えると、まだまだ余裕があると認識してしまいがちです。しかし、将来を考えた場合、様々な課題が発生することを数値の上では示しています。今だけではなく、将来を見据えて政策づくりを進めていかなければ成り立たなくなること、将来予測をいかにして改善させるかなど、今回のゼミでは中長期的な課題について認識を深める機会となりました。
(主任研究員 長谷川 昌之)