めるまが101(2019年11月8日配信)
今月の目次
(1)政策形成アドバイザーの徒然
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
(3)戸田のここに注目!
(4)戸田ゼミの取り組み
(1)政策形成アドバイザーの徒然
自治体そのものがSDGs
前回、いきなりSDGsの話をしたので、意図が伝わらなかったかもしれません。そこで、簡単に補足します。(1)縮小時代には公民連携という取り組みが求められてきます。(2)一方で、民間企業が公共部門に参入することはリスクがあります(リスクは民間の暴走や急な撤退など)。(3)そのリスクを縮小するにはSDGsという概念が有効である、という論旨でした。
SDGsは縮小時代において、価値ある概念になります。そこで自治体は積極的にSDGsを浸透させていくとよいと思います。ただし、前回も指摘しましたが、自治体が行っている現在の取り組みそのものがSDGsです。SDGsという言葉は新しいですが、概念は既にあるものです。「自分たちの取り組みがSDGs」と、自治体はしっかりと認識しないといけないと思います。
改めて自治体が「SDGsはじめます」と宣言すると、多くの職員は「また仕事が増える」と思い嫌悪感を持つでしょう。正直、職員にとってSDGsはどうでもいいことだと思います(給料が上がるわけでもないし)。そこで「既に実施している事業そのものがSDGs」と認識させることが重要です。そうすることで、職員にSDGsマインドがじわじわと浸透していきます。
多くの自治体職員はSDGsマインドを持っています。そこで「気づかせる」と言った方が正しいかもしれません。筆者は、民間企業の従業員や自治体の職員と意見交換する機会が多くあります。その結果、分かることは「圧倒的に自治体職員のほうがSDGsマインドを持っている」ことです。なので、自分が持っているSDGsマインドを再発見させることが大事です。
職員は「自治体が実施している事業そのものがSDGsである」を認識することが大事です。繰り返しますが、自治体の取り組んでいるすべての事業がSDGsの17目標につながっています。自治体は「SDGsは新しい概念だから」と身構えるのではなく、「既に実施してきたこと」と認識する必要があるでしょう。そうすることでSDGsはいい効果を自治体にもたらします。
(政策形成アドバイザー 牧瀬 稔)
(2)戸田市政策研究所の活動紹介
前回のメルマガで通算100号を迎えることができました。政策研究所にとっても大きな節目となります。年間で10回程度の発行頻度と考えると、約10年かかってここまで来ましたが、それもここまでこのメルマガを読んでくださっている皆様の励ましのおかげだと思っております。ありがとうございます。歴代の担当者からの寄稿は、前回のメルマガに掲載させていただいたとおりですが、担当者が代わっても、途切れることなくバトンをつないでこられたことに感慨深いものがあります。これまで政策研究所の活動に関わっていただいた方々に感謝です。
さて、大きな節目を越えたところで、初心に帰って心機一転、新たな歩みを重ねていかねばという責任感を感じるとともに、今後の展開に思いを馳せているところであります。政策研究所では、これまで中長期的な政策課題の研究や、大学などの研究機関との共同研究、戸田ゼミ、寄付講座などを通じて、職員の政策形成能力の養成に取り組んでまいりました。政策研究所の職員だけではなく、他の職員にも様々な経験を積む機会を提供できたのではないかと自負しているところです。
一方で、大型化する台風などの災害をはじめとして、これまで我々が経験したことのないレベルの行政需要が出てきています。様々な局面にあたり、柔軟に、忍耐強く対応していくことが、これからの時代の行政職員には求められています。組織も人材もそれに耐えうるものにしていくために、政策研究所としてできることを今後模索していきたいと考えております。
(主任研究員 住野 昌洋)
(3)戸田のここに注目!
床が動き軽運動場にもなるプールが完成
戸田東小・中学校で建設中だった屋内プールが完成し、9月にオープンしました。このプールは小・中学校が合同で使用することもあり、さまざまな工夫がされています。今回は、市の最先端プールの注目ポイントを紹介します。
プールの床が上下に動く
このプール最大の特徴はプールの床が上下可動式となっているところです。小学生と中学生の身長の差に左右されることなく、利用する子どもたちに応じて適正な水深に調節することが可能です。
6カ月間利用可能
太陽光をうまく取り込む設計となっているため、夏季以外も水温を保てます。晴天の時は5月から10月までプールを利用することが可能です。また、屋内プールであることから、天候に左右されることなくプールの授業を実施することができます。
プールが軽運動場に変わる
可動式の床を利用し、プールとプールサイド全体をフラットにすることができます。そこに人工芝を敷設することでプールが軽運動場に変わります。秋から春にかけては、軽運動場に姿を変えたプールを子どもたちが利用します。
(政策秘書室 重松 会里子)
(4)戸田ゼミの取り組み
第5回(10月23日)の報告
第5回では、全国各地でスポーツを通じたまちづくりプロジェクトに携わっている、株式会社日本政策投資銀行桂田様より「スポーツを通じたまちづくり~主にスタジアム・アリーナの観点から~」と題して講演をしていただきました。
近年、スポーツを通じたまちづくりが広がっています。特に、「ラグビーワールドカップ2019」、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」、「関西ワールドマスターズゲームズ2021」と、日本でビッグ・スポーツイベントが3年続く状況を「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と捉え、各地でスポーツを通じたまちづくりが活発化しています。「ラグビーワールドカップ2019」の熱狂からも、スポーツを通じたまちづくりの可能性を大いに感じたところです。
そこで、今回のゼミでは、スポーツ庁発足後に進められているスポーツの成長産業化や様々な施策の現状、将来の予測などを説明していただき、更にスポーツを「する」「見る」に限定するのではなく、スポーツ施設を地域コミュニティの核と位置づけ、地域の活性化につなげる先進的な取組なども紹介していただきました。
戸田市は、前回(1964年)東京オリンピックのボート競技会場「戸田ボートコース」があり、「ボートのまち」として歩み続けてきました。また、市内にはヤクルトスワローズの2軍球場があるなど、野球ファンからも愛されるまちとなっています。しかし、これらの場所には不安要素があります。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、ボート競技が「海の森水上競技場」で開催されることが決まっており、これまでオリンピックのボート競技を開催した日本で唯一の場所としてのレガシーが薄まる可能性を秘めています。また、近年プロ野球の2軍本拠地の移転が進んでいます。先日の台風19号でヤクルトスワローズの2軍球場が水没してしまったこともあり、今後に影響が出ないか心配しているところです。
こうした現状もしっかりと念頭に置き、将来を見据えて戸田市におけるスポーツまちづくりを考える必要性を改めて実感したところです。今後は、スポーツを「する」「見る」だけでなく、「支える」といった市民や団体、ファンなどとの連携が不可欠となります。そのため、この点も十分踏まえてスポーツまちづくりの可能性を研究したいと思います。
(主任研究員 長谷川 昌之)