カシノナガキクイムシとナラ枯れ(彩湖自然学習センター)
カシノナガキクイムシを知っていますか?
全国でも被害が出ている「ナラ枯れ」。埼玉県では43市町で被害が確認されています。(注釈)
ナラ枯れは「カシノナガキクイムシ」というコウチュウの仲間が原因です。
彩湖自然学習センターでは標本とともに資料の配布を行っています。
カシノナガキクイムシ(コウチュウ目ナガキクイムシ科)とは
体長5ミリメートル
分布ニューギニア、ジャワ、インド、台湾、日本
カシノナガキクイムシのメスの前胸背(ぜんきょうはい)には「マイカンギア」と呼ばれるいろいろな菌類(アンブロシア菌)を貯蔵する器官(穴)があります。
メスは木の中に潜り込むと、アンブロシア菌を植え付け繁殖させ食料とします。
その菌の中の一つに、ナラ枯れを起こす「ナラ菌(ラファエレア菌)」があります。食料になる菌はナラ菌ではなく酵母菌などです。
木が枯れてしまうのはなぜか?
まずオスが木に穴を開け、その穴からメスが入り産卵します。メスによって運ばれたナラ菌が繁殖すると樹木の水の通り道(導管)が機能を失ってしまい、枯れてしまいます。
被害木はミズナラ、コナラ、カシワ、クリ、シイ、カシなどです。
木の根元のフラス(カシノナガキクイムシの成虫や幼虫が木に穴を開けるときにできた木屑とフンの混ざったもの)
左半分が枯れてしまった木
東松山市のトラップによる駆除の様子
カシノナガキクイムシは害虫なのか?
カシノナガキクイムシ由来のナラ枯れは20世紀前半から報告がありましたが、被害は長続きしませんでした。1960年代後半のエネルギー革命のあと1980年代後半から急速に広がりました。放棄された薪炭林の木が大径化し、カシノナガキクイムシが繁殖するのに適していたことも一因です。被害は面的にも拡大しています。
しかし、昔々カシノナガキクイムシは森や林の中で大きくなった気を枯らすことによって、林床に光がさすようにし、若い木が成長するのに一役買っていたはずです。本来の役割をまた果たそうとしているだけかもしれません。
カシノナガキクイムシパンフレット(印刷用)[PDFファイル/1.03MB]
注釈
埼玉県HPより2023年11月30日現在
新座市、所沢市、さいたま市、狭山市、上尾市、入間市、川口市、川越市、飯能市、志木市、伊奈町、富士見市、三芳町、東松山市、和光市、日高市、北本市、三郷市、寄居町、朝霞市、ふじみ野市、鳩山町、滑川町、越生町、鶴ヶ島市、長瀞町、越谷市、蓮田市、坂戸市、嵐山町、深谷市、桶川市、小川町、吉見町、春日部市、吉川市、毛呂山町、ときがわ町、川島町
参考
埼玉県ホームページhttps://www.pref.saitama.lg.jp/a0905/kasnaga.html
愛知県ホームページhttps://www.pref.aichi.jp/soshiki/shinrin/0000085698.html
鎌田 直人,2002.カシノナガキクイムシの生態.森林科学(35):26-34