市指定文化財(下戸田ささら獅子舞)
(2012年7月24日撮影)
下戸田ささら獅子舞
戸田市指定無形民俗文化財:1974年(昭和49年)3月30日指定
下戸田ささら獅子舞は、元禄時代には盛んに行われていたといわれています。毎年、中町の氷川神社の夏祭り(7月)と秋祭り(10月)に、疫病退散・五穀豊穣を祈願して奉納されます。
秋祭りには、下戸田氷川神社(中町1-28-7)・神明神社(喜沢南1-8)・稲荷神社(下前2-6 )の三社などで奉納舞を行います。
この獅子舞は、親獅子・中獅子・小獅子の一人立ち三頭獅子舞で、花笠、御幣・太刀・蛇などの採物(とりもの)、締太鼓・笛などの楽器により構成されます。
現在、戸田市内に残されている唯一の獅子舞で、下戸田ささら獅子舞保存会により継承されています。
獅子舞の演目
1.「小獅子の出端・中獅子の出端」
出端の舞は獅子の舞い始めの曲です。神の前で神霊をさずかるため、おのれの身の穢れを祓い清めます。獅子みずからの禊ぎの舞です。この舞に入るときの獅子頭は、小獅子を除き(小児は穢れを知らない神の姿とすることから)水引き布に獅子頭を包んだまま、舞人が顔を隠すことなく出場し、舞を始めます。神聖な禊ぎの舞を進める内に神霊をさずかり、獅子頭を包んでいた水引布を前におろし、初めて神前の舞に移ります。獅子舞衆はこれを遊び舞と呼んでいます。
2.「とうりんり」
3.「土壌踏」
4.「木庭草」
5.「親獅子の出端」
6.「歌舞」
四方に立つ美しい四つの花笠を桜屋敷に見たて、獅子がうきうきと花を楽しんでいる姿を表現した舞といわれていますが、この歌舞は、神様をお迎えして獅子を舞うにふさわしい庭であるとのお庭ほめ歌舞のようです。
ここは何処の庭なるや
桜屋敷の庭なるや
花あそびながらも おもしろや
7.「神楽舞」
親獅子が水引布を前ななめに大きく開き、前後しながら勇壮に舞います。
8.「太刀のねらい」
9.「太刀舞」
太刀の舞は獅子舞の中でも最も重要な舞とされています。村祈祷の戸毎の舞では、この太刀の舞を短縮した、略し舞が舞われています。太刀舞は、獅子が旅の途中に不思議な物に出合う様子を表しています。三頭が中腰になって、太刀を見ながら左右に首をふって舞います。
最後に親獅子が再び挑戦、近づいて神剣であることを見定め刀を手にして目八分に押し戴き、神剣の威力によって悪魔、疫病を祓う太刀の舞となります。刀は横に振りません。
10.「三宝」
荒神舞と思われるもので三頭が三方に踏み舞をするもので非常に短い舞です。
11.「木庭草」
12.「花がかり」
三頭の獅子が、花の山でたわむれ遊ぶ姿態の舞ですが、次の蛇のみの舞の渡り舞として重要視されているものです。
13.「女獅子舞隠し」
花の山を旅していた親子連れの獅子が花に浮かれて遊んでいるうちに、突然、小獅子(女獅子)が姿を消してしまいます。親獅子と中獅子が一生懸命に探し、再び出会うまでの舞です。
14.「蛇のみの舞(蛇がかり)」
旅の途中竹薮の大蛇に気付き悪をなす大蛇を退治するという八岐の大蛇を連想させるものです。
15.「腰抜け(九字切り) 」
中獅子が腰を抜かし動けなくなります。親獅子が太鼓のバチを横に持ち下から上へと前にまわす動作を繰り返す(九字切り)珍しい舞です。
16.「上げ笛」
17.「お茶の礼」
18.「幣束舞」
このほかに「女獅子隠し」があります。これは、「蛇のみ」をやらない時に舞うものです。
下戸田ささら獅子舞の概要
獅子舞は夏祭り(八雲神社・氷川神社)と秋祭り(氷川神社・神明神社・稲荷神社)の2回行われ夏祭り(7月15日に近い土・日曜日)には氏子約五百軒を祈祷舞いして歩き、秋祭り(10月15日に近い日曜日)には先の三社に対する奉納舞のみで、村祈祷は行なわれません。
伝統
獅子舞の発祥については明らかではありませんが、古老の話によれば大正の頃すでに三百年前の昔からと伝えられています。また、昔、松平越中守のお声がかりにより江戸駒込村殿中によれば殿様にお見せしたとの伝説があります。殿中とは元禄時代の将軍家側御用人柳沢吉保の別邸六義園の桜の馬場の裏口あたりで、諸大名が訪れた際にお供の者の控所とした所で屋敷内と同じと言う意味で殿中と称していたとのことです。
このことは「十方庵遊歴雑記」の中にも見ることができます。この様なことから元禄時代には盛んに獅子舞が行なわれていたと見て良いのではないかと考えられています。
組織・稽古
獅子舞は氏子の愛好者によって保存伝承されてきたものですが、終戦後種々の都合により新井一郎氏、石橋政次郎氏が責任者となり指導および運営が行なわれ、その後1974年(昭和49年)、市の無形文化財に指定されたのを機会に保存会(会長中里次郎氏)を結成、役員の相談により役割分担、稽古日ほか一切を進めております。
なお、稽古日は毎週一回(東部福祉センター)と祭り前七日間位は神社で夜間に行なわれております。
夏祭り
7月15日午前8時30分ごろ獅子舞衆全員が氷川神社に集合します。
そして天王様の掛軸の前に獅子頭(三頭)を並べ供物をあげ、身を清めた一同が礼拝し般若心境を唱え、それが終って始めて獅子を頭にいただきます。神社の一の鳥居から列を整え、宮昇殿の笛によって宮入りを行ないます。
宮入りでは、旗持ち、幣束持ち、太刀持ち、花笠四人、小獅子(花笠の中に入って道中する)、囃子方(笛)、中獅子、男獅子、世話人ほか役員が続いて神社境内に入ります。その後、左側の天王社を一巡して社前に並び獅子舞を奉納、次に氷川神社を一巡して一通りの獅子舞を舞い、終って村祈祷に出発します。村祈祷には道行昇殿、岡崎、一ツトヤなどの笛が吹かれます。また獅子舞も特別(食事の接待など)の家以外は、ブッカブリと称して太刀舞の略したもの2、3分であげて次々と祈祷して歩きます。
下戸田ささら獅子舞の様子
保存団体
下戸田ささら獅子舞保存会
保存会の活動
練習日 毎週水曜日 午後7時から
場所 東部福祉センター(下戸田公民館)
下戸田ささら獅子舞保存会では、一緒に練習をできる仲間を随時募集しています。興味・関心がおありの方は下記をチラシをご参照ください。
関係文献
戸田市立郷土博物館調査報告書第2集 戸田市の民俗芸能2 下戸田ささら獅子舞
(戸田市立郷土博物館 1990年3月31日発小獅子出端-中獅子出端行)
見学の際には、マナーを守り、文化財の管理者や参拝者の迷惑とならないようにお願いします。