戸田市文化財ニュース
戸田市内で行った発掘調査や指定文化財などの情報を発信していきます。
ここまで分かった!戸田市の埋蔵文化財最新情報展のデジタル解説小冊子を刊行しました
戸田市立郷土博物館で2022年(令和4年)6月12日から7月31日まで開催された文化財企画展「ここまで分かった!戸田市の埋蔵文化財最新情報展」のデジタル解説冊子を刊行しました。冊子は下記サイトからダウンロードできます。
よろしければ是非確認してみてください。
戸田市の出土品紹介:南原遺跡出土の布目瓦
1972年に行った南原遺跡第4次調査では、平安時代の布目瓦(ぬのめがわら)が出土しています。
布目瓦は、瓦の凹面に布の痕が残る瓦をいいます。瓦を製作する際に、成形台から瓦をはがしやすくするために布を間に置いたため、瓦に布の痕が残りました。
布目瓦は奈良・平安時代によくみられる瓦で、戸田市で出土したものは9世紀前半ごろに作られたと考えられています。この時期に瓦を使用する建物は寺院や役所等に限られ、一般の家屋には基本的に使われませんでした。そのため、布目瓦が出土する遺跡は寺院や役所の可能性がありますが、戸田市では現在のところ数点しか布目瓦を確認できないため、近隣の寺院等から瓦を持ってきたとみられます。
左:瓦凹面の布目痕、右:瓦凸面の叩き痕
前谷遺跡第13・14・15次調査の整理
現在戸田市立郷土博物館では、調査報告書の刊行に向けて2023年に行った前谷遺跡第13・14・15次調査の整理を行っています。
整理を行う中で土器皿(下記画像)を確認しました。完形品ではありませんが、内面中央に「壽」という字が入れてあります。このような形の皿は、東京都の江戸時代遺跡ではよく見つかるもので、「胞衣皿(えなざら)」として使用されたと考えられています。
胞衣は出産のときに排出される胎盤のことで、胎盤を2枚の胞衣皿を合わせ口にして密閉し、屋敷内にある特定の場所に埋めたとされています。生まれた子供が健康に育つよう行う風習で、地域によっては昭和30年代まで行われていました。
出土した胞衣皿は幕末から明治時代のもので、市内で胞衣皿を使用していたことが今回の調査で初めて判明しました。
南原遺跡第14次調査
2023年(令和5年)3月から5月までのあいだ、戸田市南町に位置する南原遺跡で発掘調査を行いました。
調査では、古墳時代の竪穴建物1基、周溝状遺構2基、平安時代の溝1条を確認しました。周溝状遺構からは、ほぼ完形の壺が出土し、大きさからも方形周溝墓の可能性があります。報告書は今年度中の刊行を目指しています。
溝状遺構掘削写真
周溝状遺構から出土した古墳時代前期の壺出土状況
上記の壺を接合したものです。
前谷遺跡第12次調査
2022年(令和4年)9月から10月にかけて上戸田2丁目に位置する前谷遺跡で発掘調査を行いました。発掘調査では、弥生時代後期から古墳時代前期(今から約1900年から1700年前)にかけての周溝状遺構、江戸時代の溝が検出されました。
周溝状遺構を掘削している様子です。
同じく周溝状遺構を掘削しています。
前谷遺跡第11次調査
遺構の掘削を行っています
前谷遺跡第11次調査は遺構の掘削作業に入っています。周溝状遺構からは土器が多数見つかり、特に台付甕と呼ばれる昔の甕がほぼ一個体分見つかりました。調査後復元する予定です。
周溝状遺構の土器出土状況です。
下側が口縁で、上側が脚部になります。溝を埋める際に、甕をそのまま廃棄したとみられます。
前谷遺跡第11次調査を開始しました
2021年(令和3年)7月12日から前谷遺跡第11次発掘調査を開始しました。遺構検出作業を行い弥生時代後期から古墳時代前期の溝と周溝状遺構を確認しています。
発掘についての情報は随時発信していきます。
中央の黒い楕円が周溝状遺構の先端と見られます。
溝が3本重なる形で検出されました。
前谷遺跡第9次調査・第10次調査
2021年(令和3年)1月から2月にかけて前谷遺跡で、第9次調査と第10次調査を行いました。
前谷遺跡は、上戸田2丁目に広がる遺跡で、弥生時代後期後半から中世にかけての集落跡が見つかっています。
第9次調査
第9次調査では、弥生時代後期(2000年前)の有力者のお墓である方形周溝墓や、平安時代(1100年前)の幅2mを超える大溝や畑の跡を確認しました。
方形周溝墓は、墓の周囲を四角い溝で囲むお墓で、中央部は溝の土をもって墳丘としていたとみられます。市内では鍛冶谷・新田口遺跡や南原遺跡などでも確認されています。
方形周溝墓からは完形の高坏や小壺など、祭祀に用いられたとみられる土器が見つかっています。
方形周溝墓の写真。
方形周溝墓から出土した遺物。左は壺や甕、右は高坏。
平安時代の大溝、溝の下は水の影響で色が変わっています。
第10次調査
第10次調査では、弥生時代後期から古墳時代前期(2000年前から1700年前)にかけての周溝状遺構、溝状跡が見つかりました。
検出された周溝状遺構の一部は、戸田市内よく確認されている「周溝を持つ建物跡」と考えられます。昔の住居は、地面を深く掘削した竪穴住居が有名ですが、戸田市は低地で地下水位が高いため、地面を掘らない周溝を持つ住居跡が多く確認されています。
前谷遺跡第10次調査東側調査区の完堀状況。
周溝状遺構の開口部の一部。
写真中央が周溝状遺構、溝は住居の排水にも用いられたと考えられています。
左は古墳時代前期の鉢、右は平安時代の須恵器の甕。