市民医療センター 篠永 正昭(しのなが まさあき)医師
おたふくかぜは正式名称を「流行性耳下腺炎」といいます。ムンプスウイルスによる感染症で、2~3週間の潜伏期間を経て発症します。主な症状は発熱、唾液腺(特に耳下腺)の腫れ・痛みです。治療は対症療法で、通常は1~2週間程度で軽快します。主に唾液を介して接触感染や飛沫感染で広がりますが、感染力が強いため、学校保健安全法では「耳下腺、顎下腺または舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止」とされています。
注意すべきは合併症です。頻度はそれほど高くありませんが、髄膜炎、脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを発症する場合があります。睾丸炎は時に男性不妊の原因となる上妊娠初期に感染すると自然流産のリスクが高まります。また、おたふくかぜによる難聴は治りづらく、聴力の回復はあまり期待できません。そのため、日本耳鼻科学会や日本小児科学会などではおたふくかぜワクチンの接種(任意)を推奨しています。
おたふくかぜは決して軽い病気ではありません。うつらない、うつさないように心掛けましょう。また、かかったことがない方は、ワクチンの接種も検討してみてはいかがでしょうか。